起業する際に最も重要なステップの一つが「資金調達」です。
新たな事業を始めるためには、設備投資や運転資金が必要になりますが、自己資金だけでは十分にまかなえないケースが多いため、金融機関からの融資を受けることが一般的です。
本記事では、特に日本政策金融公庫(以下、公庫)の融資をおすすめする理由を詳しく解説し、その他の融資制度と比較しながら、そのメリットについてもします。
1. 日本政策金融公庫の融資とは?
公庫は、国が100%出資している政府系の金融機関であり、主に中小企業や個人事業主、これから起業する人を支援するための融資制度を提供しています。
他の金融機関とは異なり、公庫の融資は創業時の資金調達に特化しており、多くのメリットがあります。
公庫の融資の特徴
無担保・無保証で融資を受けられる
一般の金融機関で融資を受ける際は、担保や保証人が必要なケースがほとんどですが、公庫の「新創業融資制度」では、これらを必要としない点が最大の特徴です。創業者にとって、資産を持っていない場合でも事業をスタートするための資金が確保できるのは大きなメリットです。
自己資金が少なくても申請可能
公庫の融資では、通常融資希望額の10%以上の自己資金が必要とされていますが、自己資金が少ない場合でも、事業計画がしっかりしていると認められると融資が通る可能性が高まります。これは特に、起業時の資金不足がネックとなる場合に非常に有用です。
優遇金利が適用される
公庫の融資は、民間の金融機関に比べて低金利であることが特徴です。また、女性や若者、シニアの起業家向けにはさらに優遇された金利が適用される場合があります。この低金利により、資金調達後の返済負担を軽減することができます。
長期返済と据置期間の設定が可能
設備資金の場合は最長20年、運転資金の場合は最長10年の返済期間が設定でき、さらに最大5年の据置期間を設定することが可能です。据置期間中は元本返済が猶予されるため、創業直後の資金繰りに余裕を持たせることができるのは大きなメリットです。
新創業融資制度の仕組み
新創業融資制度は、創業して間もない事業者、またはこれから創業を計画している方を対象に、無担保・無保証で融資が受けられる制度です。
この融資制度では、事業計画がきちんと策定されていることが大前提となり、自己資金の少なさをカバーするために、事業計画書の内容が重視されます。
特に、公庫では実績がなくても、信頼できる事業計画や売上予測がある場合には、積極的に融資を行うことが特徴です。
2. 公庫以外の融資制度の紹介
公庫以外にも、創業時に活用できるさまざまな融資制度があります。
これらの融資制度も考慮し、最適な資金調達方法を見つけることが重要です。
制度融資とは?
制度融資とは、信用保証協会と金融機関が連携して提供する融資制度です。
具体的には、信用保証協会が融資の保証を提供し、銀行や信用金庫が融資を実施する形となります。
この制度を利用すると、金融機関はリスクが少なくなるため、創業者でも融資を受けやすくなります。
信用保証協会の役割
信用保証協会は、融資を受ける企業や個人事業主に対して信用保証を提供します。
これにより、金融機関は借り手の返済能力に不安がある場合でも、融資を行うことができる仕組みです。
ただし、この制度を利用する際には、保証料が発生します。
保証料は借り入れ額に対して一定の割合で計算され、通常は年0.5~2.0%程度です。
自治体による制度融資の補助
各自治体が独自に提供している制度融資もあります。
これらは、金利の一部を自治体が負担することで、低金利での融資を可能にしているものです。
自治体ごとに内容が異なるため、事前に調査しておくことが大切です。
特に、創業支援に力を入れている自治体では、手厚い支援が受けられることがあります。
制度融資と公庫の融資の比較
金利の違い
制度融資は自治体による補助がある場合でも、基本的には民間の金融機関の金利が適用されるため、公庫の融資と比較すると金利が高いことがあります。
公庫の融資は低金利かつ優遇措置が多いため、資金繰りに困る創業期には有利です。
手続きの違い
制度融資では、信用保証協会や金融機関を介するため、手続きが煩雑になることがあります。
公庫の融資はシンプルな手続きで進められるため、迅速な資金調達を希望する場合は公庫の方が適しています。
3. 公庫の融資を活用するメリット
1. 無担保・無保証での資金調達
公庫の融資は、無担保・無保証で資金を借りることができるため、創業者にとってリスクが低い点が大きな魅力です。
多くの創業者は、資産を持たないことが多いため、この条件は非常に有利です。
また、事業が軌道に乗る前に過剰な負担を避けることができるため、安心して事業を開始することができます。
2. 長期返済による安定した経営
公庫の融資は、長期的な返済が可能であり、最大で20年という返済期間が設定できる点も魅力です。
さらに、据置期間を設けることで、創業初期に多くの資金を投じる必要がある場合でも、返済に余裕を持たせることができます。
これは、初期のキャッシュフローを安定させるための重要な要素です。
3. 女性・若者・シニア起業家への優遇制度
公庫では、起業を支援するための特別なプログラムも提供されています。
特に、女性起業家や若者、シニア起業家には優遇金利が適用されるほか、各種手続きも簡素化されています。
これにより、これまで融資を受けづらかった層も、事業を始めやすくなっています。
4. 公庫の融資を受けるためのポイント
公庫の融資を受けるためには、しっかりとした事業計画書の作成が重要です。
事業計画書には、以下の項目を盛り込み、具体的かつ実現可能なプランを提示することが必要です。
事業内容の明確化
事業のコンセプトや対象市場、競合分析などを具体的に記載しましょう。
資金使途の説明
資金をどのように使うのかを具体的に説明することが求められます。たとえば、設備投資にどれくらいの資金が必要であるか、運転資金はどのように活用するのか、これらをしっかりと記載することで、融資審査において信頼性を高めることができます。
収支計画の策定
収支計画書では、事業開始後の収入や支出の予測を詳細に書きます。現実的な収支計画を作成することで、審査担当者に対して事業の実現性を示すことができ、融資の可否に大きく影響します。特に、新規事業の場合は、収益が安定するまでの期間が重要視されますので、据置期間中のキャッシュフローも含めた計画を明確に提示しましょう。
自己資金の証明
公庫の融資では、一般的に融資額の10%以上の自己資金を求められることが多いです。自己資金をどのように準備したか、過去の貯蓄や投資の実績を記載し、自己資金の信頼性を証明することが必要です。
しっかりとした事業計画書を作成することで、公庫からの融資がよりスムーズに進む可能性が高くなります。
5. 公庫以外の選択肢との比較
公庫以外にもさまざまな融資制度が存在しますが、それらと公庫を比較すると、公庫の融資制度は多くの点で有利です。
以下に、いくつかの例を挙げて説明します。
制度融資(信用保証協会を通じた融資)
信用保証協会の制度融資は、民間の金融機関が融資を行う際に、信用保証協会が保証人となる形で資金を調達する制度です。
この制度を利用することで、銀行や信用金庫の融資を受けやすくなりますが、保証料が発生するため、コストがかかるという点がデメリットです。
また、手続きが複雑なため、公庫の融資に比べると時間がかかるケースもあります。
自治体の制度融資
多くの自治体では、創業支援の一環として金利の一部を負担する制度融資を提供しています。
これにより、通常よりも低金利で融資を受けることができます。
しかし、金利の補助額や制度の内容は自治体によって異なり、申し込みの条件が厳しい場合もあるため、事前に詳細を確認する必要があります。
また、制度融資は、信用保証協会を通じて融資が実行されるため、保証料の支払いが必要になることもあります。
6. 公庫の融資を受ける流れ
実際に公庫の融資を利用する場合、次のようなステップで進めます。
事業計画書の作成
融資申請の第一歩は、事業計画書の作成です。公庫が重視するのは、事業がどのように収益を上げ、融資を返済する能力があるかどうかです。収益計画や資金の使用目的、将来の成長戦略をしっかりと計画書にまとめましょう。
公庫への申し込み
公庫のウェブサイトからオンラインで申し込むことができます。申請書類を作成し、必要書類を揃えたら、公庫の窓口に提出します。申請後、担当者との面談が行われ、事業の具体的な内容や計画が説明されます。
面談と審査
面談では、事業の詳細について質問されるため、計画書の内容に基づいた説明をしっかり準備しましょう。審査は、提出書類や面談の内容に基づいて行われ、通常は数週間で結果が出ます。
融資の実行
審査に通過すると、融資が実行されます。必要な資金が融資され、事業をスタートさせるための資金が確保されます。融資後は、定められた返済計画に従い、毎月の返済を行います。
まとめ
起業時の資金調達には、日本政策金融公庫の融資が非常に有利です。
無担保・無保証での融資、低金利、長期返済期間など、公庫の融資は多くの起業家にとって負担を軽減し、事業をスムーズに進めるための強力なツールとなります。
さらに、女性や若者、シニア起業家への優遇制度も充実しているため、幅広い層の起業者にとって有用です。
もし、公庫の融資についてさらに詳しく知りたい方や、融資申請に必要な事業計画書の作成に不安がある場合は、ぜひ税理士法人伊勢山会計にご相談ください。
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